税収に貢献する喫煙者のどこが悪い!

猪瀬直樹(東京都副知事・作家)

猪瀬直樹
1946年生まれ。信州大学卒業。『ミカドの肖像』で第18回大宅壮ノンフィクション賞受賞。『日本国の研究』で文藝春秋読者賞受賞。2007年、地方分権改革推進委員会委員、東京都副知事に就任。

公共の場所での喫煙を全面禁止にするという神奈川県の禁煙条例の例に限らず、喫煙者にとっては、まことに肩身が狭い時代になった。そんな“禁煙ファシズム”とも言える現状を、東京都副知事で愛煙家の猪瀬直樹氏(61)が喝破する。

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 まず事実として言いたいのは、昨年度(07年)の国のたばこ税が約2兆2000億円。そのうち地方のたばこ税が約1兆1000億円もある。僕は政府税制調査会委員でもあるけど、ばかにならない税収ですよ。たばこの問題を語る時、税収の側面から考えてみることは大切だと思う。意外と喫煙者自身も納税意識が薄いけど、それだけの税金を支払っているんだからさ。もっと、タックスペイヤーとしての認識を持っていいんじゃないかな。

分煙についても以前とは比べ物にならないほど、喫煙者の意識も変わってきている。新幹線では喫煙スペースが徹底され、分煙化は進んだ。今は飲み屋さんなんかでも、分煙に配慮しているケースが増えているでしょ。つまり、分煙で受動喫煙に関する問題は、かなりのところクリアできていると思うんだよね。喫煙者の健康については、まあ、これは個人のアレだからね。

それと、受動喫煙ばかりがとやかく言われるけど、こんな現実もある。首都高速が走る墨田区、荒川区あたりの家庭では、これまで外にシーツなどの洗濯物を干しておくと真っ黒になっていた。それが、デイーゼル車規制、例の(石原慎太郎)知事が会見で真っ黒なススが入ったペットボトルを振り回してたやつね。その条例で洗濯物被害がなくなったっていうんだよね。また、ゼンソク問題もだいぶ解消されている。

それだけ、排気ガスの問題は深刻だったわけでしょ。そんなトラック一台と一箱吸うタバコの煙、どっちが有害なのか考えればすぐにわかるはず。

マナーの問題についてひとこと言うと、これはかなりよくなっているよ。僕もね、当然、携行灰皿を持ち歩いてるし、そういった意味じゃ「ポイ捨て」を批判した意味はあったと思う。今、ほとんど、町なかでポイ捨てする人はいないでしょ?それだけの効果があったら、それで十分なんじゃないかな。それを、それ以上にヒステリックに言うと、禁煙ファシズムになっちゃう。特にマナーについては、精神的自制であって、本来法律で縛るもんじゃない。

また、近いとこではこんな出来事もあった。知り合いの歯医者さんに久しぶりに会ったら、顔が真ん丸でメタボになっている。聞いたら禁煙ストレスで食べちゃうみたいで、ああ、やめたらああなっちゃうんだなと(笑)。喫煙、メタボ、五十歩百歩、よしあしかもしれないけど、健康における費用対効果は考えどころだと思うよ。ストレスのない人間なんていないんだからね。

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