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[2015年4月14日]

【喫煙を考える】「東京都への提言案」もとに再検討へ 一筋縄でいかない条例化議論

2020年東京オリンピック・パラリンピック開催を見据え、昨年10月から4回にわたって行われてきた「東京都受動喫煙防止対策検討会」。その内容を取りまとめる第5回会合が3月30日に行われたが、安念潤司座長(中央大学大学院法務研究科教授)が示した「2018年までに再検討」という案に一部委員が反発。結論は、急きょ決まった次回会合(日程は未定)に持ち越すこととなった。

同検討会は、医学、法学などの専門家や有識者12人で構成され、これまで医師会、飲食業、旅行業など10団体から意見聴取を行ってきた。各団体の主張や要望は、議論された内容や委員の意見とともに東京都に提出される。

それらを踏まえて安念座長がまとめたのが以下の「東京都への提言」案だ。

(1)国に対して全国統一的な法律での規制を働きかけ、現行のガイドラインに基づく対応を強化する。ガイドラインでは禁煙が原則だが、過渡期には分煙対策を推進し、事業者に対し実効性のある対策となるよう財政的な支援を行う。

(2)受動喫煙から未成年者や従業員を保護するための対策を講じる。そのために、従業員対策を行っている事例を幅広く収集し、普及啓発に活用する。

(3)都は(1)と(2)の取り組みの工程表(ロードマップ)を提示する。

(4)2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、18年までに国の動向やガイドラインに基づく対策の効果を踏まえ、条例化を見据えて受動喫煙防止対策を再検討する。

この座長案に対し、条例推進派の委員から「罰則なり全面禁煙なり、もっと実効性のある提言にすべきだ」「(4について)3年も先送りする必要性が感じられない」といった反対意見が噴出した。

条例推進派、慎重派、反対派が混在する検討会の舵取りを任されている座長にすれば、これがベターのまとめと思われる。各団体の意見や要望も汲み取った上でのまとめであることもうかがえた。

しかしこうして結論が先送りされてしまうと、「結局どこまで行っても平行線をたどるしかないのがこの問題」と思わざるを得ない。次回会合までにそれがどこまで修正できるだろうか。

5回の会合で方針を決める予定だった「東京都受動喫煙防止対策検討会」だが、条例推進派の一部委員の反発で、急きょ決まった次回会合まで結論は持ち越しとなった。安念潤司座長(中央大学大学院法務研究科教授)がまとめた「東京都への提言案」が、「2018年までに国の動向や(既存の)ガイドラインに基づく対策の効果を踏まえ、条例化を見据えて再検討する」として、条例化の先送りを示していることに異論を唱えたためだ。

また、これまで議論されてきた内容や委員の主な意見も都への提出資料としてまとめられたが、これにも一部委員が難色を示した。「資料は『推進派』と『慎重派+反対派』の意見が同程度の割合。これでは検討会の結論に誤解を招く」というのが理由だ。

これを安念座長は、「議論の内容を示すには数的な割合より賛否両論を幅広く取り上げることの方が大事」と一蹴。しかし自身の提言案は再考する意向を示した。

会合後、「条例制定は現時点では困難」としたことについて、安念座長は「熟度が足りなかったのでしょう」と記者団に漏らした。

今後については「基本的には私が取りまとめた提言案をもとに、条例化に向けて再検討を行うことになると思う」としつつ、「条例化のためには詰めるべき問題が相当残っている。それらについて何も議論しないまま進めていくのは非常に危険。施行に至るまでにはこれからかなりの時間をかけて議論していく必要があると思う」と語り、この問題が一筋縄でいくものではないという考えを示した。

検討会ではこれまで、事業者団体や市民団体など10団体が意見陳述を行い、各委員もそれぞれの言い分に理解を示してきた。各団体の自主的な取り組みが成果を上げていることも十分に伝わったかに見えたし、座長の提言案もその言い分を反映したものだった。

しかし、今回の一部委員の反発は、そうした民意を汲み取った上での考えとは到底思えないという印象だった。

WHO(世界保健機構)やIOC(国際オリンピック委員会)も同検討会の動向を注視している。東京都には、さまざまな圧力に気圧されることなく、状況を熟慮した上での方針決定に期待したい。

そもそも日本は諸外国に比べてはるかに、分煙化などの自主的な取り組みが進んでいる国なのだから

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