[2014年3月11日]
続報 受動喫煙防止対策に迷走する山形県
吉村美栄子知事が「3月中に方針を示す」と明言した受動喫煙防止対策が、思わぬ波紋を呼んでいる。条例制定も視野に入れた動きに、連日、賛成・反対両派からの意見が殺到。悩みを深める知事は、方針決定の先送りも示唆し始めた。
「山形県としてこの方向に進んでいくんだ、という社会的な考え方を示すべきだ。ぜひ条例の制定を」
6日午後3時。県庁の知事室を訪れた県医師会の大内清則常務理事が、吉村知事に詰め寄った。同席した県歯科医師会などの医療福祉関係団体と連名で、受動喫煙防止条例の制定を求める要請文を提出した。
その前日の午後3時。同じように知事室を訪れていたのは、県たばこ販売協議会の幹部たちだ。
「条例の影響でたばこの販売が落ち込めば、零細のたばこ販売店は生活が立ちゆかなくなる」。条例制定に反対する立場から、知事に意見書を出した。
吉村知事は多忙の合間を縫って関係者からの意見聴取を続ける。来週も別の団体から、受動喫煙防止対策に関する陳情が予定されているという。
なぜ急に陳情が活発になったのか。きっかけは2月6日にあった、検討委員会からの報告書の提出だ。
報告書は「県内の受動喫煙防止対策は事業者らの自主的な対策頼みで、効果が不十分」と指摘。
飲食店などでの分煙を進め、健康づくりにつなげるため、条例制定など「新たな社会的枠組み」を整備すべきだと結論づけた。
27日の県議会で吉村知事は、3月中に「社会的枠組み」の具体的な方向性を示す考えを表明。知事が考えを固める前に意見を伝えようと、関係者の動きが活発化した――というわけだ。
とはいえ、急に賛否両論がわき起こり、吉村知事にも少々予想外だった様子。
これまでは条例制定や憲章の策定に前向きな考えを見せてきたが、3月6日には記者団に「今年度中に方針を決めないことも含めて考える」と話すなど、明らかに態度を後退させている。
理由の一つに挙げるのが4月に迫った消費増税だ。
「増税は県内経済に大きな影響を及ぼす。そこを切り抜けて下さいと言っている私が、(この対策で)水を差すわけにはいかない」
加えて、対策の基本姿勢が県民に伝わっていないという懸念もあるらしい。
「進めたいのはあくまで『受動喫煙』の防止策。禁煙を強制するものではないのに」。6日の陳情中も、思わずうらみ節が漏れた。
喫煙文化研究会としての見解
厚生労働省の指針が、「義務」から「努力」に後退したのは既報のとおりですが、厚労省の指針が後退した以上、わざわざ条例制定をするのは、意味をなさないものと考えます。
繰り返し申しますが、世界の潮流は室内禁煙、屋内自由、であり、日本の受動喫煙対策は奇妙なものであるといわざるを得ません。