[2014年3月27日]
受動喫煙防止条例先送り…山形県知事「今年度中に判断」撤回
受動喫煙の防止策を盛り込んだ条例制定について、山形県の吉村知事は24日の記者会見で、今年度中に判断するとした方針を撤回し、結論を先送りする考えを明らかにした。
受動喫煙対策の必要性を県民に周知し、改めて条例化を検討するとしているが、政治姿勢を疑問視する声も上がっている。
会見で知事は「禁煙を強制されると誤解している県民が多い。受動喫煙の正しい知識を周知する期間を設け、消費増税の影響をしばらく見極めたうえで判断したい」と説明した。
2月27日に県議会で「今年度中に判断する」と発言してから1か月弱。見通しの甘さを指摘されると「(受動喫煙が)非常になじみの薄い言葉だと分かってきた。上からドーンとやるのではなく、段階を踏んだ方が効果が出ると思うようになった」と釈明した。
4月には、学識経験者や業界関係者による会議を設置。県民運動を展開する考えも示したが、条例化を判断する時期については「もうしばらく(先)ということになるが、『何年も(先)』ということにはならない」と述べるにとどまった。
知事が結論を先送りした背景には、最大会派の自民党を中心に議会内で、4月から始まる消費増税に加え、分煙設備の導入による事業者の負担増を懸念する声が高まっていることがある。特に、飲食店や宿泊業などが強く反発している。
ただ、条例推進派からは「受動喫煙に寛容な県民意識が業界団体の主張に力を貸している」(医療関係者)との指摘が出ている。
県が2012年度に行った県民アンケートでは、受動喫煙を行政が規制すべきか、施設や店舗の判断で行うべきかについて、「施設の判断」が55%だったのに対し、「行政による規制」は45%にとどまった。
受動喫煙対策が飲食店を選ぶ基準になっているかどうかについても、「なる」が45%で、「ならない」の55%を大きく下回った。
第三者による県の検討委員会は今年2月の報告書の中で、「(受動喫煙の)被害を与える側、受ける側双方とも自覚に乏しい人が多い」と指摘している。
このため、条例制定に前向きな県議は「周知不足は当初から分かっていたはず。それでもなお対策が必要だと判断したから、知事は積極姿勢を示したのではないか」と今回の判断に疑問を投げかける。批判的な議会関係者も「みんなに良い顔をしたいから、反対されるとあっという間に引っ込めた。リーダーとしてあまりに軽い」と指摘した。
◆少しずつでも前に進めば
条例制定を訴えてきた県医師会の有海躬行(みゆき)会長は、「いろいろな団体があるので、一挙に条例というのは難しいのだろう」としたうえで、「世の中は受動喫煙防止の方向に間違いなく進んでいる。少しずつでも前に進めば良い」と語った。
◆我々の厳しい状況に配慮
条例化に反対する飲食店や喫茶店、宿泊業者などでつくる県生活衛生同業組合団体協議会の寒河江政好理事は、「我々が直面している厳しい状況に配慮されたのではないか。知事の判断を歓迎したい」と述べた。