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[2014年10月27日]

マクドナルド全店禁煙の影響は?-産経デジタル

全国で3千店舗以上を展開するファストフード最大手、日本マクドナルドホールディングスが平成26年12月期の連結最終損益が170億円の赤字に転落する見通しとなった。7月に発覚した品質期限切れ鶏肉問題に加えて、8月から全店舗を店内完全禁煙に踏み切ったことも影響しているようだ。

“デフレの勝ち組”と呼ばれた同社にとって赤字転落は11年ぶりで、2003年12月期に出した約71億円の赤字を100億円も上回る。

今年2月から売り上げ減少が続く中、7月下旬にチキンナゲットの調達先であった中国の食肉加工会社が消費期限切れの鶏肉を使っていたことが発覚。全店禁煙実施後の8月には全国2583店舗で「豆腐しんじょナゲット」と「マックウィング」の一部の購入者から73万円余を過剰徴収するトラブルも引き起こしてしまった。

逆風が吹く中で店内完全禁煙はスタート。環境への配慮を打ち出すことでイメージ回復を狙ったとの見方もあるが、「数年前から店内全面禁煙へ移行しており、昨年までに既に9割の店舗で実施してきた」(日本マクドナルド広報担当)と既定路線だったとし、「愛煙家にはご迷惑をかけてしまうがきちんとコミュニケーションをとり、引き続きご愛顧願いたい」(同)と喫煙者の“排除”ではないことを強調する。しかし、反応は厳しかった。

ビジネス街を中心に都内のマクドナルドをいくつか回ってみた。

どの店舗も分煙時代にあったはずのアクリル板が取り払われ、スーツ姿を見かけることは極めて稀。代わりに周辺に点在する分煙で営業している大手チェーンの喫茶店などがにぎわっているように見受けられた。

マクドナルドから徒歩1分ほどの場所に位置するカフェで、関西から出張で来たという喫煙中のビジネスマン2人に話を聞いてみたが「マクドはコーヒーが100円でありがたかったんだけど、夏から全然行ってません」。

利用者はたばこが吸える店を選ぶことできるが、現場で働くマネージャーの悩みは深刻だ。

品川区にある店舗からは「子供連れのお客様からは歓迎されているけれど、平日昼間のサラリーマン客が減って大打撃。本社の方針だから従うしかない」という、あきらめともとれる声が聞かれた。

また、港区のオフィス街に位置する店舗のマネージャーは「長年通ってくれてた常連の喫煙客が周辺にあるタバコの吸えるコーヒー屋さんに流れてしまった」ことや「朝の時間帯のお客さんが目に見えて減ってしまった」ことを嘆いている。

フードコンサルタントの白根智彦氏は「マクドナルドは気楽なカフェ的機能も担っているので、全店での実施には違和感を持つ。機能的には分煙でよかったはずであるが全席禁煙まで踏み切ったことはある意味謎である」と疑問を呈する。

さらに「タバコを吸うにもお金がかかる都市部の喫煙マーケットでは、安く手軽に利用できるマクドナルドは重宝されてきた。利用動機の大幅減は間違いなく、全店店舗内全面禁煙は、予算を背負う営業部隊からすると大変に迷惑な話であろう」とマネージャーに同情を示した。

8月から全国3135ある全店舗で完全禁煙を実施したマクドナルド。たばこを吸わない人やファミリー層などから歓迎される一方、喫煙者が多いビジネス街にある店舗のマネージャーからは顧客流出を嘆く声も。「たばこを吸うためにファストフードを利用」「禁煙だった場合は他の店を探す」―。喫煙者の傾向を裏付ける民間調査会社の調査結果も出た。

調査会社ネオマーケティングは首都圏(1都3県)在住の20〜60歳代までの喫煙する男女500人(男250人、女250人)を対象に「ファストフード店での居心地調査」をインターネットで実施した。調査期間は全店禁煙実施後の8月12〜18日。

調査結果によると、ファストフード店に望むこととして「喫煙スペース」を53.4%が挙げ、店に行く理由は50.6%が「たばこを吸うため」。さらに「たばこが吸いたい時、入店した店が禁煙だった場合どうしますか」という問いには49.2%が「その店はあきらめて喫煙できる店に行く」とした。

フードコンサルタントの白根智彦氏は「喫煙者に好意を持たない人も多かったが」と断ったうえで「店内の電源でPCを使って喫煙しながら仕事をこなす営業マンは、ファストフード店にとって重要な顧客層」と話す。

マクドナルドの全店禁煙については「たばこを吸うにもお金がかかる都市部の喫煙マーケットでは、安く手軽に利用でき重宝されてきた」と営業面における影響を示唆。調査結果では「最もよく飲食するファストフード店」としてマクドナルドを挙げる回答者は63.0%に上った。

愛煙家の反応はどうだろうか。喫煙文化研究会の山森貴司事務局長は「全面禁煙という決定は喫煙者は来ていただかなくて結構という消費者軽視の企業風土を表しているように思う。罪人のように扱われるのはつらい」と嘆息する。「小中高校の多い場所に店があった場合は致し方ないかもしれません。その場合はたばこの吸える喫茶店に行きます」とも。

マクドナルドでは数年前から店内全面禁煙へ移行しており、昨年までに9割の店舗で実施済み。「小さなお子様からお年寄りまで利用している。幅広い層が安心して美味しく食べられるような環境を提供したい」(広報担当)と強調する。

一方、モスバーガー、フレッシュネスバーガーなど喫煙者と非喫煙者を両方取り込む形での完全分煙に力を入れている競合他社も多い。

白根氏は「安全は当たり前であるが、そもそもファストフードで健康を目指すのもどうか。店舗の立地環境によってはスターバックスのような“付加価値”として全面禁煙を導入するのはあり。受動喫煙のない措置がしっかり取られていれば分煙で問題なし」との見方だ。

業界最大手が打って出た全店舗における店内完全禁煙。業績悪化に歯止めをかけるのか、それとも拍車がかかるのだろうか。

 

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