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[2014年9月29日]

たばこ、酒はやめる必要なし。医療ジャーナリスト富家孝 氏

飲酒と喫煙を続けると、長生きできない。これは、いまでは定説になっている。その結果、多くの方が年を取ると、これまでどおりの飲酒と喫煙を続けることに不安を抱き、無理をしてでもその習慣を断ち切ろうとする。

しかし、本当に酒やたばこをやめると、長生きできるのだろうか。

じつは、飲酒と喫煙が長寿と関係しているかどうかを示す確実なデータはない。確かに、酒もたばこも、飲み過ぎ、吸い過ぎは体に悪い。しかし、これは嗜好(しこう)習慣であり、無理に断ち切ってしまうと、かえってストレスになる。とくに「酒は百薬の長」とも言われるように、たしなむ人の方が禁酒した人より長生きするという疫学調査もある。

国立がんセンターの調査でも、日本酒を飲んでも1日に1合(180ミリリットル)以下の場合は、まったく飲まない人に比べ、死亡率が低いことが明らかになっている(1990〜96年に、岩手、秋田、長野、沖縄4県の40〜59歳の男性約2万人にアンケート)。

また、ハーバード大学による内科医健康調査では、1週間に2〜6杯の飲酒は心臓病の急死のリスクを減らすという結果が出ている。

そこで、私はむしろ、食事しながらならば、酒をたしなむことを勧めている。とくにリタイアして交友関係が減った方は、たまに合う友人知己との食事の席ではそうした方がいい。家庭でも、家族との食事の席ではそうすべきだ。その方が寿命も延びる。量的には缶ビールなら1〜2本、日本酒ならカップ酒1〜2杯、ウイスキーならダブルで1杯程度は十分な許容範囲だ。ただし、1人酒はあまりお勧めできない。酒量の歯止めが利かなくなるからだ。

一方のたばこだが、これもやめてストレスになる人は、やめる必要はない。確かに、たばこの煙には400以上の化学物質が含まれ、中でもタール、ニコチン、一酸化炭素は3大有害物と呼ばれている。

しかし、たとえばよく「たばこを吸うと肺がんになる」と警告する人がいるが、これは論理的には成立しない。「肺がんの原因がたばこ」ということと「たばこ吸うと肺がんになる」ということとは、別の話だからだ。もしそうなら、たばこを吸っている人は必ず肺がんにならなければならない。

今は「自己責任社会」である。つまり、リスクを取ればなんでもしたいことができる自由が保障されている。したがって、吸うか吸わないかは個人の自由であり、食後の一服を習慣にしてきた人は無理してやめる必要はないだろう。

食後の一服だけでは治まらない人は、1日半箱程度までなら、私は問題ないと思っている。飲酒もそうだが、たばこも文化という見方ができる。司馬遼太郎氏は「文化とは、一見不合理にみえても精神の安らぎを与えるもの」と言ったという。

とすると、音楽にしても、映画にしても、文学にしても、みなどこか不合理だから、たばこもまた文化といえる。もちろん、食文化という言葉があるように、食も文化だし、飲酒も文化である。したがって、たばこも文化であるから、これを健康という側面だけで否定しては、老後の豊かな生活は成り立たない。

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