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[2015年1月30日]

「東京五輪へ禁煙化」 細野助博氏「法より価格政策で誘導」 すぎやまこういち氏「公共の場では分煙徹底」-産経新聞

2020年東京五輪に向け、東京都内での受動喫煙防止策について、都設置の有識者会議で検討が進められている。舛添要一知事は「飲食店でたばこが吸える先進国は日本だけ」と飲食店や公共機関などの全面禁煙化を目指すが、慎重論も根強く、分煙化の徹底が落としどころとなりそうだ。一番の「おもてなし」とは何か。禁煙化のあり方について、中央大学大学院教授の細野助博さんと作曲家のすぎやまこういちさんに見解を聞いた。(福田涼太郎)

■細野助博氏

--一部で導入されている飲食店などでの全面禁煙化をどう見る

「空気は誰のものでもなく、迷惑をかけない限り喫煙の自由はある。ただ、受動喫煙の被害を考えれば分煙化は必要になる。WHO(世界保健機関)による規制枠組み条約の最終的な目標は『脱たばこ社会』。健康が害されれば医療費もかかる。行政が誘導するなどして、最終的に喫煙者自身の合理的な『賢い選択』として禁煙が進めばいいと思う」

--どのように禁煙を促すのか

「価格政策が一番効く。少し価格が上がったからといって、みな喫煙をすぐにやめるわけではないが、吸う量は減るし税収も増えるし、こんな良いことはない。価格を上げることで、お金を持っていない未成年のたばこへのアクセスもコントロールできる。タスポ(成人識別ICカード)などの購入ルートを制限する方法と違って効果的だ。価格政策が(禁煙化に向けた)一番のコントロール手段ということは米国で実証済みだ」

--ロンドンやバンクーバーなど過去の五輪開催都市では、飲食店や公共施設での全面禁煙を法制化したケースがある

「当初は『喫煙マナーを守ってほしい』と呼びかけたが、社会が期待に沿わなかったので強権的に禁煙化に踏み切ったのだろう。日本でも同じようにするのがいいことなのか、上から押しつけるのではなくて先進国として高いマナー意識を見せるべきだ」

--東京五輪に向けて具体的にどうすべきか

「外国人観光客でも喫煙する人はいる。だから、たばこを吸う人にも吸わない人にも、同じような水準の『おもてなし』をしないといけない。双方に『おもてなし』を与える賢いやり方を議論すべきだが、話し合っているうちに五輪が終わってしまう。とりあえずは、マナーの向上と日本の技術力を活用した商業施設などの分煙の徹底だろう。施設の分煙化はコストがかかるので、補助金を出すなどした方がいい」

--公共の場での全面禁煙化については、喫煙者からの反対が根強い

「賛否双方とも議論がかみ合っていない。たばこはあくまで合法的な嗜好品(しこうひん)。ただ、たばこを吸う人は『リスクを理解して吸っているんですね?』ということだ。果たして、しっかりと理解しているのか疑問。もう少しリスクについての情報を提供する必要があるし、医師や歯科医らが人体にどう害が出るのか研究して、もっと科学的根拠を示してほしい。情報提供と組み合わせて価格政策と分煙政策を進め、受動喫煙を限りなくゼロに近づくようにしなければならない。そうやって禁煙に誘導すればいい。法制化では摩擦を生むだけ。急がば回れだ」

■すぎやまこういち氏

--すぎやまさんは愛煙家の著名人が集う「喫煙文化研究会」を設立し、喫煙の権利を各所で訴えているが、改めて喫煙のメリットとは

「『喫煙文化研究会』の会長として言わせてもらうと、喫煙は飲酒とともに一つの文化であり、古来の文学、浮世絵を見ても喫煙シーンは出てくる。それに、私はオーケストラのメンバーらと休憩時間に喫煙場所で一緒になるが、いいコミュニケーションの場になり、公式の場よりほっとしていることもあって、本音で話を聞くことができる。お酒を飲んでいるときと同じような効果を得られる。たばこは気分をリセットでき、曲を作るときには助けになった」

--指摘される喫煙のデメリットとして避けて通れないのが健康面でのマイナスだが

「よく健康問題が持ち出されるが、喫煙と肺がんの因果関係は(医学的に)よく分かっていないのではないか。それに私の知っている範囲で、アルコールで急死する人はいるが、たばこで急死した人はいない」

--公共の場所で全面禁煙化を求める声がある

「禁煙を求める人たちは喫煙のプラス面に一切目を向けない。こちらの立場や考え方を聞かずに頭の上から言ってくる。まさに『禁煙ファシズム』といえる。禁煙は『何となくいいこと』というイメージから、付和雷同で禁煙派が声を強めている。(全ての場所での禁煙が)法制化されるようなことがあれば、禁酒法時代のアメリカにおける酒みたいに、たばこが地下に潜って売買され、犯罪組織などの資金源になる恐れもある」

--たばこの価格も徐々に上がってきている

「『喫煙は悪』というイメージに乗って、税金を取りやすいところから取るということだろう。喫煙派が飲酒する人と同じくらいの勢力だったら、状況も違っていたはず。たばこ税と同じように酒税を上げたら相当反発があったと思う。多勢に無勢だ」

--海外から多くの外国人が訪れることになる東京五輪に向けてはどうすればよいか

「公共の場では分煙を徹底すればいい。喫煙席やコーナーをしっかりとつくってすみ分けをする。海外では飲食店などで全面禁煙になっているが、東京(の一部)と違ってパブの外や路上で吸えるようになっている。むしろ路上喫煙の方が道路が汚れるし、受動喫煙の可能性があるので、路上での規制は仕方がない。しかし、屋内はせめて禁煙ではなく分煙とすべきで、そのために喫煙する側もマナーを守る必要はある。もっとも喫煙マナーを言うのであれば、飲酒マナーのことも言わないと不公平と思うが」

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