たばこは私の6本目の指
淡路恵子(女優)
- 淡路恵子
- あわじ けいこ 一九三三年、東京生まれ。四九年、黒澤明監督の映画『野良犬』で銀幕デビュー。五〇年、松竹歌劇団に入団。草笛光子、深草笙子と組んでスリーパールズにも抜擢され歌に踊りに大活躍した。多くの松竹映画に出演。主演したメロドラマ『この世の花』は続編、続々編と大ヒット。六〇年代には、東宝の駅前シリーズや社長シリーズのレギュラー出演など数多くの映画に出演した。テレビドラマでは、六一年にNHKの伝説的大ヒット・オールスタードラマ『若い季節』に女社長役で出演。 『太夫さんより・女体は哀しく』と『下町』の演技でブルーリボン賞の助演女優賞を受賞。著書に『凛として、ひとり』(実業之日本社)がある。
Special Interview
「たばこは私の6本目の指」
淡路恵子 女優
愛煙家は多額納税者
──今度たばこが七〇〇円になるみたいですね。
淡路 この前、小宮山洋子厚労大臣が、一箱七〇〇円にするとかって言って、いまの一箱四九〇円、まぁ五〇〇円だってみんな大変なのに、当然みたいに言ったでしょ。私、あのテレビを見てものすごく腹が立ったんです。
──嬉しそうな顔をしてましたね。
淡路 そうよ、ものすごく嬉しそうに。それはともかく、税金って厚労省が決めるんですか? 違うでしょ。たばこに限らず、お酒を飲む人だってみんな、一銭だって値上がりはしてほしくないはずですよ。焼酎だってウイスキーだって、上ってほしくないですよ。自分が好きで、それこそ全員が飲むわけじゃないから、仕方なく受け入れている。政府がそういうところにターゲットを絞っているから、みんなもう否応なしに税金を取られているだけの話です。
それをあんなニコニコしてね、一箱七〇〇円が当然みたいに言われるとね、ムカムカムカムカ、この怒りをどこへぶつけようかしらと思いますね。みんな思ったと思います。
たばこを吸う人は多額納税者ですよ。吸っていない人より余分に税金を納めている。一本何十円も税金を払っているのに、悪者扱いをされて、ものすごく腹が立ちますね。
──最近の嫌煙風潮をどう思われますか?
淡路 変ですよ。だってたばこは趣味のものでしょ。嗜好品ですよ。それを吸っている人はなんだか悪者みたいに。じゃあ最初から売らなきゃいいんです。日本で一切たばこは売りません。たばこを吸っている人は罪人ですって言われたら吸わないわよ。そうすれば、吸わない人も増えるだろうし、本当に吸いたい人は、どっか他の国に行ってしまうでしょう。だから売っていてなんですかって話ですよ。
私ね、ほっといてもらいたいの。吸おうが吸うまいが、本人の勝手でしょ。吸って具合が悪くなって死んだっていいんですから。そう思って吸っているわけだし。
税金はいただきますと言っておいて、それで悪者みたいな扱いには納得がいかない。吸いたい人は吸って、吸いたくない人は吸わなきゃいい。
──その時にルールを守れということですよね。
淡路 もちろんそれは当たり前です。ポイ捨てなどはいけませんし、吸っていい場所で吸うとかいうのは当然です。
なんでもかんでも吸っている人が悪者。冗談じゃない。
しかも、なぜかたいていの喫煙ブースは手動なのよね。手で開けて煙でモンモンの中に入っていって、肩寄せ合ってみんなでたばこ吸って。悪いけど、人より税金を払っているんだから、せめて踏んだら開くぐらいにはしてほしい。(笑)
──女優さんというのは、非常にクリエイティブなお仕事だと思うんですけど、やっぱりそういうお仕事をされている方というのは、どちらかというとたばこを吸われる方が多いんじゃありませんか?
淡路 いや、どうなんですかね。映画とかいわゆる映像の世界にいるスタッフさんは、たばこを吸っている人が多いですね。みんなちょっとでも休憩があるとバーッと喫煙所に向っている姿をよく見ますよ。
──そうですか。石原軍団の俳優さんたちは、テレビの宣伝で全員禁煙と言っていますが。
淡路 禁煙したい人は禁煙すればいいし、嫌な人はしなければいい。それは勝手ですよ。だから石原軍団が全員禁煙しようが、したくない人はしなきゃいい。それで石原軍団を「やめろ」って言われたら、やめたらいいと思う。そんなこと、人のことだからほっておいてもらいたいわよ。税金払って、たばこ屋に売っているのを買って吸っているんだから。盗んで吸っているわけじゃないんですよ。
──淡路さんのおっしゃっていることは筋が通っていますよね。政府として、それだったら最初から売らなきゃいいって話ですよね。売っている以上は、できるだけ庶民を苦しめない値段で売るべきです。だから増税はおかしい。一方で悪者扱いをし、一方では税金を吸い上げると。だからどう考えてもこれはおかしいということですね。
淡路 おかしい。両方でひどい目にあっているんですからね。どっちかにしてもらいたいわよ。税金を払っているんだから、大威張りしてもいいはず。それを税金は払わされるわ、吸うと悪者扱いにはされるわ。それじゃ立つ瀬がないでしょう。
作曲家のすぎやまこういちさんと二人で話しているときに、肺がんになれば納得。他のがんだったら許さないって大笑いしたんですよね。「肺がんなら、それは仕方がないと思えるけど、他のがんなら僕は許さない」ってすぎやま先生がおっしゃっていた。
嫌いな人も好きな人もいるものなのだから、もうほっといて。国で、絶対にダメと言っているものを無理やり吸っているわけじゃなくて、売っているものを買っているんだから。それでその人たちが吸ってくれるおかげで税金が入ってくるにも関わらず、吸っている人の悪口ばっかり。ほっといてもらいたい。
たばこは健康のバロメーター
──淡路さんはすごくお元気そうですが、一日どのくらいたばこを吸われているんですか。
淡路 私は変な話、六十年間吸い続けていて、灰皿の淵に置いて消しちゃうのもあるけど、舞台かなんかやっていると一日大体三箱は吸います。
それこそ一週間ほど前ですが、心電図と肺の写真を撮ったんです。病院の先生から「六十年たばこを吸っていて、この肺は見事ですね」って言われましたよ。心電図はきれいな音ですねって。で、こうやって肺を見て、「へぇ六十年間ね、二箱、三箱ずつ吸っている肺がこれかね」って先生がおっしゃったの。
──たばこで具合が悪くなったことはありませんか?
淡路 全然。たばこで具合が悪くなったことはありません。声が枯れたこともないです。舞台をやっていても、舞台から楽屋に戻ったら吸います。たばこは私の人生から切り離せない。舞台で声が聞こえないって言われたことはないですよ。客席の後ろにまでちゃんと届きます。常にこういう声だし、歌も歌うし。それと別にたばこを吸っているからといって、不安なんて感じたことは一度もないですね。
七十八歳まで六十年間吸い続けていて、肺はなんともないんです。人によっては、別にたばこを吸わなくても肺がんになる人はいるんじゃないですか。
私はあまり病院に行ったことがないんですが、ちょっと背中が痛いとか、膝が痛いとかで形成外科に行ったんです。そのときも、先生が「たばこ吸いますか」って聞くから、「吸います」って。「どのくらい吸いますか」って言うから、「一日三箱くらいです」って答えた後、先生に「なんか食欲が出て、太れるようにするにはどうしたらいいですかね」って聞いたら、「そうね、淡路さん、たばこ食べるのをやめてご飯を食べてください」と言われ(笑)、その一言が気に入って、私はずっとその先生のところに行っているの。
──おもしろい先生ですね。今日初めてお会いして、お年をお聞きしてものすごくお若いというか、健康な感じがされるんですけど、健康の秘訣は何ですか。何か運動とかされているんですか。
淡路 ウォーキングとか、運動はしなきゃいけないと思うんですけど、やりませんね。だから、健康の秘訣はたばこ。たばこが美味しい日は元気。調子が悪かったらたばこが美味しくないですもんね。そんなに吸いたいと思わない。だからたばこが健康のバロメーターです。でも、風邪をひいても吸いますよ、もちろん本数は少し減りますけど。(笑)
──今一番問題になっているのが、受動喫煙、副流煙。吸っていない人が、吸っている人の煙を受けることが言われますが。
淡路 極論すれば、そんなことは知らないわよ、となります。
私は必ず灰皿のあるところで吸うし、ルールは守っている。だから、それ以上のことはとやかく言わないでほしい。すぎやま先生もルール違反は喫煙、禁煙関係なくダメだっておっしゃっていたけど、その通りだと思う。私は、密輸してまで吸おうとは思わないから、日本で日本国としてたばこは一切ご法度ってなったら、やめます。売っているから吸っているんです。
──こうした、喫煙者ばかりを悪者にする社会は健全じゃないですよね。
淡路 もともとたばこは、吸うことでリラックスできるなどの効果があり、いわゆる労働者の方たちが、疲れを癒すために吸っていたものだったはずです。ものすごく体に悪いものですよと言われて販売されたわけじゃない。
たばこのことを言うなら、コーヒーも同じだと思う。コーヒーもいろいろ言われていますよね。興奮剤だし、カフェインが含まれているし。成分を分析していけば、たばこと同じように体に悪いなどといわれるようなものだと思います。
ただ、コーヒーは無理やり飲ませない限り吸収されるものではないから、隣の人がコーヒーを飲んでいるからといって、具合が悪くなることはない。煙は自由にどこでも行ってしまうから、どうのこうのと言われてしまいますが。
また、アルコールだって、依存症になって死んじゃう人もいる。同じようなものだと思います。だからすごく辛い物が好きだったり、にんにくをいっぱい食べたり、唐辛子をいっぱい食べたって、勝手だと思うのよ。それで胃が悪くなろうが、何しようが本人が苦しめばいいんだから。
──しかし、神奈川県や今度、兵庫県が禁煙条例を布くと言っています。たばこは本来趣味、嗜好の問題ですから、とやかく人様が言うことではないわけです。つまり、「お前の着ている服が気に食わない」とか言っていたら、毎日が騒動です。ですから、人様の趣味、嗜好については口を挟まないのが、大人の常識です。ところが、それを健康問題にしているわけです。
淡路 健康だったら、アルコールもそうだし、ものすごくオイリーなものもそうだし、甘いものもそうだし、健康って考え始めるとどれだってそうじゃないですか。それを、鬼の首をとったように、たばこだけをとやかく言うのはおかしいですよ。
──しかし、ちょっと面白いのが、たばこを販売するほうも喫煙者も健康に気遣っているのか、たばこもニコチンの量を減らしたりしているじゃないですか。
淡路 私はニコチンの量なんて、気にしたことないわよ。自分が美味しいと思うから吸う。以前吸っていたのが、ポールモールという真っ赤な箱のたばこ。あれは確かニコチンが15・、タールが18・かなんか。そしたら何十年か前に突然製造中止になってなくなっちゃったのよ。その時はもう大変。いつも頼んでいたたばこ屋さんであるだけ買って、あと六本木にあるたばこセンターでもあるだけくださいって買って。そしたら同じたばこを吸っていた友達がちょうど禁煙することにしたみたいで、何十カートンってダンボールで送ってもらって。
でも、吸い終わったら何を吸って良いのかわからないのよ。何十年もポールモールだったから。しょうがないから、それらしいのを五、六個買ってきて、片っ端から吸ってみたの。どれが自分の口に合うか。でも全然軽いのよね。吸いなれないからまずいのよ。
──吸っている感じがしないんですね。
淡路 そう。でも仕方がないから、フィリップモーリスを選んだのかな。ポールモールとはまるで味が違うんだけど、ちょっと強かったから。
ところが、ある日、海外旅行に行ったとき、小さなホテルの自販機でたばこを買ったんです。夜で暗いし私は目が悪いから、自販機で自分が何を選んだのか確かじゃなかった。それで出てきたたばこが、今吸っているパーラメントのライトハンドレッドだったの。あれ? 私フィリップモーリス押したのになって思ったんですが、このたばこ、箱の角が丸くなっていてなんだか可愛いじゃない。この箱がもう好きになっちゃって、それから何十年もパーラメントのライトハンドレッドを吸っているんです。
初たばこは舞台の上で
──淡路さんは、一九六〇年代、東宝の映画『社長シリーズ』とか『駅前シリーズ』で、たばこを吸っていましたよね。
淡路 常に吸っていました。他にもNHKの『若い季節』。毎週日曜日のテレビで吸っていました。何にも言われなかったし、むしろその頃は女の人はあんまり吸わない時代だから、「淡路さんみたいにたばこが吸えるような女性になりたい」って言われましたよ。
ですから、水商売の人はみんな私に憧れてたばこを吸ったっていう話が残っているくらいです。私も少しの間マダムをやっていた時期がありましたけど、店の女の子が、ママがたばこを吸う姿が素敵で、ああいう風に素敵にたばこを吸えるようになりたいから勉強したとかって。
まあ、たばこは私の六本目の指みたいなものですから。(笑)
でも私、自分でどうしてもたばこを吸いたいって言って吸ったんじゃないんです。十七歳のときにSKDの舞台で吸わされたんですよ。十七歳の人にたばこを吸えって言ったのは大人なんですからね、その責任はどうするんだって。(笑)
未成年がどうこうって、昔はそんなことなかった。子供でもたばこを吸ってたわけです。
──その意味では、鷹揚な時代でしたね。
淡路 だって「はい、そこでたばこ吸って、それで水兵が出てきたら、そこで捨てて消したらこうやって蹴飛ばして」って、そういう踊りの振り付けが中にあるわけですよ。幕がバッと開いたら、女が三人並んでたばこを吸っている。そこへ水兵が三人出てくる。たばこをぽんと落として、ピッと蹴飛ばして三人で踊るっていう。そういう舞台だからたばこ吸いなさいって言われて。だから吸うのが当たり前。舞台をやるんですから。
──映画でもテレビでも舞台でもなんでもそうでしょうけど、今はたばこを吸うシーンっていうのはほとんどないですよね。どう思われますか?
淡路 私は吸いますよ。吸ってくださいって言われますから、反対に。でも映画やテレビでたばこを吸わないのって変よね。だって昔は見ていたらむせ返るような気がしたもの。刑事部屋や新聞記者のたまり場みたいなところでは吸ってない人がいないんだから。
今は、北朝鮮なんかで貧困に苦しんでいる子供たちがたまに写りますが、戦争が終ったときの日本も同じだったのよ。シケモクを子供が拾って、ご飯が食べられないから吸って。上野の駅に戦災孤児っていうのがいっぱいいて、よちよちのこんな小さな子なんかでも全部たばこ。全部たばこ吸っていたのよ。実際、私も見たことがあります。
──シケモクで腹がすいているのを癒しているんですか。
淡路 そうそう。結局なんにもないから。泥は食べられないから、大人が捨てたたばこを拾って。よちよち歩きの子がですよ。
映画『青春の門』を見たら必ずそういう場面があります。子供がシケモクを一生懸命吸って、一食食べたような気持ちになっている。あれをなぜ終戦記念日にやらなくなったのか。きっと子供がたばこを吸っているとかそういうことを言う人が出てきたからだと思いますけれどね。
──それは終戦直後の日本の姿ですからね。
淡路 それを私は毎年見せるべきだと思います。今の日本からはとても想像できないかもしれないですが、日本も戦争に負けて、こんなにみんな食べるものがなかったのよ、ほんとうに貧乏だったのよって、教えるべきだと思う。
小さな両手でたばこを握って必死に吸う。私はあれを見ると胸が痛くなるんです。
父の代わりにたばこを吸う
淡路 たばこは父が好きだったんです。父は私が十二歳のときに亡くなっているので、私は父の代わりにたばこを吸っていると思っています。私がいくら吸っても体にこないのは、私だけが吸っているんじゃなくて、父も一緒に吸っているからでしょう。私のように、死んだ父のために吸っている人もいるんです。
うちには、お線香がありません。その代わりが吸いつけたばこ。仏様用の灰皿に供えるんです。あとはインスタントコーヒー。いろんな種類の小さいデミタスカップに、その都度選んで淹れて、あとは一番の水がいつものお供え。
──お線香の代わりにたばこですか。
淡路 そう。私には兄がいるのでお仏壇もないし、写真ですからね。だから父が一番好きだったたばこがお線香の代わり。
何十年か前、日本にいろんなたばこが入ってきたときに、デパートも一番目立つところに世界中のたばこがディスプレイされていました。今だったら私が全部ね、一つずつ、たとえばそれが何十種類あろうと、父に買ってあげられるのに、もう父は居ないわけですよね、とっくに亡くなっているから。だからどうしても父にはたばこを供えなきゃいられないんです。
──お父様とたばこの印象的な思い出はありますか。
淡路 ありますよ。戦争前後のことですが、当時は八歳やそこらの子供にもたばこを売ってくれるような時代でした。だから、戦争が始ってたばこも規制されると、兄や母、十歳になるかならないかの私、父と家族みんなでたばこ屋の前に並んで、その決まった量だけ、全員で買うわけですよ。それで戦争が激しくなって入手できなくなって父がごねたりしました。
自分の家の地下に防空壕はありますが、大きなお屋敷の山に横穴式の防空壕を掘る仕事とかがありました。父のような、家にいて暇な人たちを町内会で手伝いとしてみんな集めて、何カ月か働く。そのお礼がたばこだったわけです。もう父は喜んですごく大事に大事に吸っていました。
それで、戦争が激しくなって、疎開して島根にいた時の話です。私は父とあまり仲良く話したって思い出がないんですね。昔の父親っていうのは、女の子となんかベタベタしゃべりませんからね。でも私は父が好きなたばこを吸えなくてガッカリしていたのを見ていた。それで友達に、「かわいそうなのよ、うちのお父さん。たばこがないから」って言ったら、「たばこなんて山ほどあるよ」って言うのよ。「えー、うちのお父さんたばこがすごく好きだけど、たばこがなくてかわいそうよ」って言ったら、「持ってきてあげるよ」って言うから、「あ、持ってきてちょうだい」って言ったら、次の日、両手いっぱいに新聞紙に包んだ枯れた葉っぱを持ってきた。たばこの葉っぱです。
私は、たばこっていうのは製品化されて紙に包まれたものだと思っていたし、枯れた葉っぱを刻んで巻いているなんて知らないわけですよ。だから、「これ、たばこ?」って聞いたら、「これはたばこ。家の納屋にいっぱいある」って言うんです。「そんなの持ってきて大丈夫なの?」って言ったら、「こんなもの山ほどあるからいくらでもあげる」って言って、それで私はそれがたばこって言うから、新聞紙みたいな紙に包んで家に持って帰ったんです。帰ったら父が「どうしたの?」って言うから、「友達がくれた、これはたばこ?」って聞いたら「たばこだ」って言って、もうほんと涙ぐんで喜んでいたのをいまでも覚えています。
──それはたばこの葉っぱなんですね。
淡路 葉っぱなんです。それがね、50・くらいの大きな葉っぱなのよ。しかもカフェオレのような茶色で。島根県のほうでは、たばこの葉を作っている農家があったんですよね。
――フィルターなしで吸うってことですよね。
淡路 昔は当然フィルターなんてない。両切り。いまはもうフィルターで十分健康は守られているのよ(笑)。昔はひかりとかゴールデンバットとかいろいろありました。私たちが吸うころはもう洋モクがずいぶん出てきましたが。ポールモールとか、マルボロとかね。キャメルなんてみんなでさ、このらくだは夜になったらどこに泊まるでしょう。なんて、ばかみたいなことを言って笑っていたわね。(笑)
私は百歳まで生きようとは思わないけれど、七十八歳で元気で、たばこが美味しいっていうのは最高じゃないですか。私はそう思います。
ルールを守って好きなたばこを吸う、それが悪だ、犯罪だなどというような社会が、
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