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[2014年7月18日]

受動喫煙防止対策、広がる官民一体の動き ZAKZAK

自治体と業界団体の関係者が一体となって受動喫煙防止対策に取り組む動きが各地で進んでいる。行政主導型で先行してエリア分煙を義務付けた神奈川と兵庫県で、飲食店を中心に反対の声が上がったことが背景にある。大阪府は分煙も認めない「完全禁煙」型の条例案を業界団体の反対で撤回後、官民一体となって受動喫煙防止対策の推進に努めている。

大阪府の松井一郎知事が受動喫煙防止条例案を撤回したのは昨年3月のこと。公共施設での分煙を認めず全面禁煙を義務化するという神奈川、兵庫以上に厳しい内容で罰則規定も設けた。そして、対策を進めるためのガイドラインは未定だった。ガイドライン次第では死活にかかわるとして旅館や飲食店から撤回を求める運動が持ち上がった。

「一番影響が出るのは旅館や飲食店なのに(条例案をまとめた府の審議会部会では)学校の先生、医師、薬剤師ら直接利害のない委員によって全面禁煙の動きが出た。約10万軒ある喫茶店や飲食店の代表は私一人だけで、人選そのものが違うと感じていた」

昨年9月に発足した大阪府受動喫煙防止対策協議会の小林芳春会長(大阪府中華料理業生活衛生同業組合理事長)が振り返る。小林会長は審議会部会にも出席していた。完全禁煙の流れが民間にも拡大したら大変だと危機感を募らせて署名運動や陳情を行い、条例案の撤回にこぎつけた。

民間の意見を軽視したまま条例を制定したとされる神奈川、兵庫県については「条例やガイドライン次第で何割かは閉店を余儀なくされるという現実がある。民間の協力がなかったら(行政は)成り立たないし、意見に耳を傾けるべきだ」と厳しい意見を述べ、民間事業者を交えた受動喫煙防止対策推進の大切さを説く。

小林会長らが立ち上げた協議会は旅館ホテル、飲食店、喫茶店、カラオケボックスなど20の業界団体で構成され、約2万店が参加。協議会には府もオブザーバーとして出席した。そういった過程を経て府健康づくり課はガイドラインの文言を完成させている。

そして協議会では「喫煙」「分煙」「時間分煙」「エリア分煙」「完全分煙」「禁煙」の6パターンに分けた「喫煙環境ステッカー」を作成し、希望する店舗・施設に無料で配布。一目で分かるステッカーを店頭に表示することで喫煙者、非喫煙者とも不安なく入店してもらおうという試みだ。

大阪府もステッカーの問い合わせを受ければ協議会を紹介するなど連係。秋頃には府も「全面禁煙」「時間禁煙」の2種類のステッカーを作成する予定だ。ガイドラインでも「全面禁煙が困難な場合の対策」として、「時間禁煙」「分煙」の表示の推進を求めている。

消費生活アドバイザーの中村友宇子さんは「喫煙者も非喫煙者も、店舗の喫煙環境について知りたいと思っている気持ちは同じ。『喫煙』と『禁煙』の二択であれば分かりやすいが、最近は『分煙』の店舗が多くなっている」と指摘。「分煙にはエリア分煙や時間分煙等のように様々なタイプがあり、消費者にとっては分かりにくい状況だ。店頭で具体的にどのような喫煙環境になっているのかが判別できれば、店選びがよりスムーズになるはず」と話している。協議会が作成したシールの店頭表示は的確な手法といえる。

大阪府は学校、病院などの公共施設で禁煙を推奨する一方、民間の自主的な取り組みから分煙が最も実効性のある有効な対策であることを理解し、柔軟な対応を示した。喫煙者も非喫煙者も心地よく飲食店などを利用するためには、今後も大阪府のように民間事業者を交えての取り組みが推奨されるべきだろう。

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